従業員個人のモバイルデバイスを業務で使用する場合、セキュリティ対策は非常に重要です。そこで、従業員のプライバシーを保護しながらも、業務用アプリケーションの安全管理を行うMAMが役立ちます。本記事では、MAMの基本的な仕組みやMDMなどの他のシステムとの違い、導入時のポイントを詳しく解説するとともに、MAMを導入することで得られるセキュリティ強化や業務効率向上の具体的なメリットについても触れていきます。
公開:2024.10.31 / 更新:2024.10.31
【目次】
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MAM(Mobile Application Management)とは?
MAMは日本語で「モバイルアプリケーション管理」と訳されます。企業が、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス上で使用する業務用アプリケーションを効率的に管理して、セキュリティを確保するためのシステムです。
近年、BYOD(Bring Your Own Device)、すなわち従業員が個人所有のモバイルデバイスを業務に利用する仕組みの普及が見られます。そして、勤務時にはそのモバイルデバイスにアプリケーションをインストールし、使用するのが一般的です。
しかし、このような運用スタイルでは、セキュリティリスクが高まりかねません。企業は、従業員のモバイルデバイスにインストールされたアプリケーションの使用を制御し、重要な業務データを保護する必要があります。同時に、従業員が個人で利用するアプリケーションのプライバシーにも配慮しなければなりません。
MAMは、これらのリスクを軽減するために、特定のアプリケーションのみを管理し、業務データの漏洩や不正使用を防止する役割を果たします。MAMを導入することで、企業は従業員が使用しているアプリケーションを把握し、不正なアプリケーションの使用を防ぎます。また、リモートでアプリケーションを管理できるため、セキュリティリスクを低減しつつ、効率的な業務運用が可能です。
MAMとMCM、MDM、EMMの違い
MAMは、しばしばMCM、MDM、およびEMMと混同されますが、それぞれ管理対象や機能が異なります。以下では、それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
MCMとの違い
MCM(Mobile Content Management)は、日本語で「モバイルコンテンツ管理」と訳されます。モバイルデバイス上で扱われるコンテンツに特化して管理するシステムです。
MCMの主な目的は、企業が重要なコンテンツを従業員らへ安全に共有し、保護することです。コンテンツのアップロード、ダウンロード、編集などの操作に対して細かいアクセス制御を設け、コンテンツの安全な配信と利用を保証します。また、MCMはデータの暗号化、アクセス権限の設定、ファイルの共有範囲の制御が可能で、機密情報が外部に漏れることを防ぐ役割を担います。
MAMとMCMとの違いは管理の対象です。MAMがモバイルデバイスのアプリケーションを中心に管理する一方、MCMはドキュメント、メディアファイル、データなど、モバイルデバイス上で扱われるコンテンツそのものを管理します。
MDMとの違い
MDM(Mobile Device Management)は、日本語で「モバイルデバイス管理」と訳されます。すなわち、企業内のモバイルデバイス全体を管理するためのシステムです。
MDMでは、企業が従業員に貸与したモバイルデバイスに対して、セキュリティポリシーの一括適用、リモートでのロック、位置情報の監視、セキュリティアップデートの管理などが行えます。これにより、端末の私的利用や不正利用による情報漏洩を防ぐことが可能です。また、端末の利用状況を可視化することで管理者が各端末の状態を常に把握できる点や、端末の紛失時には遠隔でのデータ消去が可能な点も特徴です。さらに、初期設定やネットワーク設定を自動化でき、企業の管理コストや時間の削減に寄与します。
MAMとMDMは管理範囲が異なります。MAMはアプリケーション単位の管理に焦点を当てており、アプリケーションのインストールやアップデート、アクセス制御を行うことに特化しています。一方、MDMはモバイルデバイスそのものの管理を行う点が大きな違いです。
EMMとの違い
EMM(Enterprise Mobility Management)は日本語で「エンタープライズモビリティ管理」と訳されます。MAM、MDM、MCMを統合した包括的なモバイル管理システムです。
EMMの最大の特徴は、モバイルデバイス、アプリケーション、コンテンツのすべてを一元的に管理できる点です。これにより、従業員がモバイルデバイスで業務を行う際、端末の管理から業務アプリケーションの使用、さらには社内コンテンツへのアクセス制御まで、すべてを効率的に保護・管理できます。
MAMとEMMの違いとして挙げられるのは、MAMがアプリケーションの管理に特化しているのに対し、EMMはデバイスやコンテンツの管理も包括して行う点です。EMMはより総合的なモバイルデバイスのセキュリティを提供します。したがって、MAMだけでは管理が追いつかない場合、EMMを導入することで対応可能なケースも多々あります。
ただし、EMMはその包括的な機能ゆえに、導入コストや運用の手間がかかるというデメリットがあります。MAMであれば、コストを抑えつつ、アプリケーション管理に限定したセキュリティ対策が可能です。業務においてデバイス全体の管理が必要ない場合には、MAMを選択すればそれだけで十分な効果を得られるケースも少なくありません。
MAMの主な機能
MAMは、企業が従業員のモバイルデバイスで使用するアプリケーションを効率的かつ安全に管理するために、さまざまな機能を提供します。以下では、MAMの代表的な機能について詳しく解説していきます。
利用可能なアプリを限定する
MAMを導入することで、企業はアプリケーションの管理が可能です。これにより、モバイルデバイス上で企業から許可された業務に必要なアプリケーションだけが利用されて、不要または危険なアプリのインストールを防げます。加えて、マルウェア感染やデータ漏洩といったリスクを抑止できます。
また、MAMはアプリケーションの使用に関する詳細なルールを設定することが可能です。具体的には、スクリーンキャプチャなどの動作を制御できます。そのため、業務上のデータが外部に漏れるリスクを相当程度軽減してくれます。
BYODとしては、私的なデータや通信には影響を与えずにセキュリティを確保することが可能です。これにより、従業員のプライバシーを侵害せずに、企業の業務データを守れます。
アプリのデータ配布とインストール
企業が従業員に対して、新たな業務用アプリケーションのインストールや、既存のアプリケーションのアップデートを指示しても、全員がすぐに対応するとは限りません。特に、セキュリティに関するアップデートが遅れると、情報漏洩のリスクが高まります。
しかし、MAMを活用すれば、企業は従業員の行動を介すことなく業務用アプリケーションの配布やバージョンアップを一斉に行え、こうした問題を解消できます。
さらに、MAMではアプリケーションの配布対象を部署や役職などのグループごとに細かく設定でき、適切なタイミングで配布やインストールの指示を出せるほか、不要になったアプリの一括削除も簡単に行えます。
この仕組みにより、管理者が従業員ごとの対応状況を手動で確認する手間が省け、業務も効率化できます。また、従業員の負担軽減に加え、常に最新のアプリケーションが適用されることで、セキュリティの強化にもつながります。
インストールされたアプリを遠隔削除する
モバイルデバイスは持ち運びが簡単で便利な反面、紛失や盗難のリスクが高く、その際に業務データが第三者に漏れる危険性があります。しかし、MAMを導入すれば、遠隔操作で業務用アプリケーションやデータを即座に削除でき(リモートワイプ機能)、セキュリティリスクの大幅な低減が可能です。この機能は、端末紛失時だけでなく、従業員が退職した際や、業務でモバイルデバイスを使用しなくなった場合にも役立ちます。さらに、モバイルデバイス自体に遠隔でロックをかける機能も備わっているため、端末への不正アクセスを防ぐことが可能です。
MAMを導入するメリット
以下では、MAMを導入した際の主なメリットを詳しく解説していきます。
無許可のアプリを原因としたウィルス感染などを防止
BYODの普及により、従業員が個人のモバイルデバイスを業務に使用することで、「シャドーIT」という問題が発生します。シャドーITとは、企業が承認していないソフトウェアやアプリケーション、IT機器を従業員が勝手に業務に使用することで、セキュリティリスクが増大する状況を指します。これにより、ウィルス感染や情報漏洩のリスクが高まる可能性があります。
MAMは、このシャドーITの問題に対処する有効な手段です。MAMを導入することで、企業は業務に使用するアプリケーションを一元的に管理し、無許可のアプリケーションのインストールや使用を制限できます。これにより、ウィルス感染や不正なデータアクセスのリスクを大幅に軽減できます。
業務データの保護とセキュリティの向上
MAMにより、業務用アプリケーションだけでなく、その関連データも高度に管理され、企業全体のセキュリティが強化されます。
さらに、MAMはモバイルデバイスの紛失や盗難といった偶発的な事態にも対応しています。遠隔操作で業務用アプリケーションやデータを削除できる機能が備わっており、万が一デバイスを失った場合でも、重要な情報の外部への流出を防ぎます。
また、MAMでは、業務用データを私的領域にコピーすることを制限する機能も提供しています。これにより、従業員による会社のデータの私的利用や、個人用の端末へのデータ移動といった内部不正の防止が可能です。
管理の効率化
MAMを導入することで、モバイル端末にインストールされたアプリケーションの管理が統一され、効率的な運用が可能です。従来は、端末ごとに個別でアプリケーションを管理し、手作業でアップデートや配布を行う手間がかかっていました。しかし、MAMによれば、企業全体に必要なアプリケーションのインストールや、不要になったアプリの一括削除をスムーズに行え、管理者の負担も大幅に軽減されます。
さらに、各アプリケーションのバージョン管理やセキュリティポリシーの適用も一元化されます。これにより、従業員が常に最新かつ安全なアプリケーション環境で業務を行うことが可能となって、業務の生産性向上にもつながります。
MAM導入時の注意点
MAMの導入には多くのメリットがありますが、効果的に活用するためには事前に注意すべき点がいくつかあります。以下では、特に重要な注意点を詳しく解説します。
対応可能なデバイスの種類やOSを確認する
MAMを導入する際にまず確認すべきは、企業で使用されているモバイルデバイスやOSに対応しているかどうかです。iOS、Androidなど、各社のモバイルデバイスやPCが混在している場合、それぞれに対応できるMAMシステムを選定しなければなりません。管理ツールによってサポートするOSやデバイスの種類が異なるため、事前にしっかりと調査し、互換性を確認することによって、導入後のトラブルを避けられます。
導入後も従業員教育を行う
MAMを導入することで、業務用アプリやデータの管理が強化されますが、それだけで全てのセキュリティリスクを完全に防ぐことはできません。MAMを効果的に運用するには、導入後も定期的に従業員に対するセキュリティ教育を行うことが重要です。従業員が新しいシステムに適切に対応し、セキュリティポリシーを理解し実践することで、データ漏洩や不正アクセスのリスクをさらに軽減できます。
操作しやすいシステムを選ぶ
もし、従業員がMAMを操作する際にストレスを感じたり、業務効率が落ちると感じたりすると、企業の管理外で使い勝手の良い他のアプリケーションに頼ってしまうことが考えられます。
そのため、導入時にはシンプルで直感的に操作できるMAMを選定することが重要です。従業員が日常的に使うアプリケーションやシステムの管理を円滑に行える環境を整えることで、シャドーITの発生を防止し、業務効率の向上とセキュリティ強化を両立させられます。
モバイルデバイスの管理ならLINC Biz emm
シャープのLINC Biz emmは、企業が業務で使用するモバイルデバイスを総合的に管理するための強力なツールです。EMMであるため、モバイルアプリケーション管理のMAM、モバイルデバイス管理のMDM、モバイルコンテンツ管理のMCMの3つで構成されています。これはAndroidデバイスを効率的に管理し、操作しやすいユーザー体験を提供するだけでなく、セキュリティ強化にも貢献します。特に、スマホメーカーとしての知識を活かしたカスタマイズ性の高い機能は、多くの企業にとって大きな魅力です。
LINC Biz emmは、業務用モバイル端末を管理するために必要なアプリケーションの一括配信や設定を簡単に行え、紛失や盗難時の情報漏洩リスクも、遠隔ロックやデータ消去機能を活用することで最小限に抑えられます。これにより、企業はセキュリティ面での不安を解消し、効率的に業務を進められます。
また、操作はシンプルで3ステップだけで完了し、誰でも簡単に利用できるのが大きな特長です。さらに、テレワーク環境でも問題なく端末の管理が行えるため、柔軟な働き方にも対応可能です。たとえば、製造業や金融業など業種に応じたセキュリティ設定が可能で、カメラ機能の制限や特定の通信手段の禁止など、企業ごとのニーズに合った細やかな対応ができるのも大きなメリットです。
LINC Biz emmを導入すれば、DX推進の障害となるモバイルデバイスの管理課題を達成し、柔軟で効率的な運用が実現できます。ぜひ導入の検討をしてみてください。
まとめ
MAMは、企業がモバイルデバイス上の業務用アプリケーションを管理し、BYODの普及によるセキュリティリスクを軽減します。MCMやMDM、EMMとは異なる特有の機能を持ち、導入することでより効率的な業務運用が可能となります。導入に際しては、OSの確認や従業員への教育を行い、システムの適切な運用を心がけてください。