ステイホームが叫ばれる昨今、自宅にいながら鑑賞できる「オンラインライブ」は、ニューノーマル時代の娯楽の形として定着しつつあります。そこで、オンラインライブの“現在”と“未来”、さらにおすすめの楽しみ方を、アーティスト・十束おとはさん(フィロソフィーのダンス)と演出家・渡辺大聖さんにお聞きしました。表現者と作り手、それぞれの視線で語られる「オンラインライブ」の世界をお楽しみください。
十束おとは
8月9日神奈川県生まれ。4人組アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」のメンバーで、愛称は「おとはす」。2020年9月23日にシングル「ドント・ストップ・ダンス」でメジャーデビューを果たす。ゲーム、アニメ、漫画、自作PCをこよなく愛するオタクキャラで、関連イベントの出演などソロ活動も多数。2021年4月にはプロゲーミングチーム「魚群」に加入し、アイドル&プロゲーマーとして活躍している。
渡辺大聖
1992年8月23日生まれ。リアルからバーチャルまでさまざまなアーティストのライブ演出を手掛ける気鋭のクリエイター。代表作は「This is 嵐 LIVE」「TWICE DOME TOUR 2019 “#Dreamday”」「あんさんぶるスターズ!Starry Stage 2nd」など。2020年4月に声優の梅原祐一郎、中島ヨシキらと結成したバンド「Sir Vanity」ではクリエイティブディレクターとVJを担当する。
――コロナ禍で多くのアーティストがリアルでの活動を自粛せざるを得なくなった2020年。フィロソフィーのダンスは結成5周年の記念日となる8月6日にユニット初の無観客オンラインライブ「5 Years Anniversary Party」を開催されましたね。
十束おとは(以下、十束):2020年は5周年とメジャーデビューという節目の年で、実は全国ツアーも決まっていたんです。私自身とても楽しみにしていたのですが、それができなくなったのが心残りでした。それでも「何かしたいね」とメンバーで意見を出して、一番大事にしているのはやっぱりライブだから、メジャーデビューの前にアットホームな5周年ライブをしようと。レーベルの方にもお力添えいただいて、オンラインライブという形になりました。
――ファンの方々からも大きな反響があったそうですね。
十束:SNSなどで「ありがとう」と言ってもらえて、久々にファンの方々と意見交換もできました。でも、私たちとしては不慣れな部分が多くて。カメラをファンの方々だと思ってパフォーマンスするわけですが、音楽番組の経験がまだ少ない私たちは向けられたカメラを有効活用することができず、間に1枚壁があったように見えたかもしれません。皆さんの目の前まで熱気を届ける、パッション溢れるライブがしたかったのに、100%の思いは届けられなかったかもしれない、と反省点はかなりあります。もちろん楽しかったけれど、課題が残るライブになりましたね。
――ファンを大切にするメンバーの皆さんにとって2020年は葛藤の年になったのでは?
十束:確かにできないことは多かったのですが、あまり悲観し過ぎないのがこのグループのいいところ。会えない時はメンバー同士でズームを開いて基礎からダンスを揃えたり、ダンスの先生からレッスンを受けたり。「ライブをしよう!」といって自分たちでセットリストを組んでそれぞれの自宅で歌ったり踊ったりしたこともありました。誰も見ていないけれど(笑)。
皆さんに会えなくて寂しくもどかしい気持ちはありましたが、メンタル的には前向きに過ごしていました。
――ここからは渡辺大聖さんにもご参加いただき、2020年11月19日に行われた渡辺さんプロデュースによる二度目の無観客配信ライブ「Philosophy no Dance “World Extension”」について伺います。池袋のライブスペース「harevutai」で開催されたこのライブでは、AR(拡張現実)技術を取り入れた斬新な演出が話題になりましたね。
渡辺大聖(以下、渡辺):当時は、オンラインライブで何ができるかを誰もが模索していた時期でした。僕自身も考えましたが、やっぱりどう頑張っても“現場(生のライブ)”のかわりにすることはできないなって。肌で感じるもの、目や耳から入ってくるものを感じられる体験と、画面を見ている体験は全然違います。それをベースに考えたら、オンラインライブは現場の「劣化版」になってしまう。それはよくないと思いました。
そこで目指したのが、ライブ、テレビ番組、MV(ミュージックビデオ)の融合です。テレビ番組でいうと、カメラワークやカメラに向かってのパフォーマンス。観客に目線を送って気持ちを伝えるということは重要視しました。MVでいうと照明です。絵的に派手なライブ照明だけでなく、カメラを通して美しく見えるMV用の撮影照明を入れました。それらをライブで重ね合わせて、誰も体験したことのない時間を作れたらと考えたんです。
その中で、ARは分かりやすく“新しい体験”ができるテクノロジー。画面を通してだけ見られるオンラインならではのモチーフとして提案させていただきました。
十束:ARライブを見たことはありましたが、ステージに立つのは初めてで、「こうして作られているんだ」という勉強にもなりました。「なんで?」という曲では自分たちの前に「Why」の文字が出てきて……踊っている時はそんな感覚は何もなかったので映像を見た時にとてもビックリ。新鮮で素敵な体験でした。
――プロデュースするにあたってのテーマはありましたか?
渡辺:テーマは「コネクション」です。聞いてくださるお客さんとのつながり、メンバー間やファン同士の絆。現場に行けない方々が一緒に楽しんでくれる、そんな体験も含めてのコネクション。このライブをきっかけにいろいろなものがつながっていくといいなと思いました。
わかりやすく見える形での――たとえばリアルタイムでズームをつないでステージの後ろにファンの顔を映し出す演出もありましたが、もっと大事にしたかったのは目に見えない部分。配信を見たファンがTwitterでハッシュタグを付けて盛り上がるとか、それ以前にもメンバー同士がライブに対して話しあったり、元々外部にいた僕がチームに入ってライブを作ったり。見えない部分がつながって広がっていった結果が大切なんです。
十束:コロナ禍でライブやイベントができなくなり、ファンの方の姿や声に触れる機会が本当に少なくなってしまっていました。でも、11月のライブの日はすごく盛り上がって、「楽しかったね」とか、ステージの後ろに映った顔を見て「あ、○○さんだ!」みたいなSNSの書き込みもいっぱいあって。久しぶりにファン同士のつながりが感じられて、その日だけはコロナ前の現場感に戻った感覚があったんです。
確かにオンラインは現場の代わりにならないけれど、とても近い感覚でした。
――ライブを見る端末はスマホやタブレットなどさまざまだと思いますが、そういった環境も考慮されたのでしょうか?
渡辺:オンラインライブの鑑賞に使われる端末のデータを調べたら、圧倒的にスマホが多く、2番目がパソコン。画角も解像度も見る人の環境によってまるで違うわけです。それで、まずどういう画角感で映像を届けるかを考えました。次に、密度感。表現や演出をきちんと見せるには、スマホをベースとして画面の密度感を作らなければなりません。照明のビーム量は適切か、後ろに移るLEDの映像がカメラの画角に入るか、収録のディレクターたちと話をしながら作りました。
渡辺大聖さんが設計を手掛けた未来型ライブ劇場。最新の音響・照明・映像・ネットワーク設備のほか、CGライブ用の透過スクリーンや配信サイト向けの設備も常設する。
「大きな舞台でお金をかけてやっていたような演出を、クリエイターがパソコン1台で実現できる、新しい時代の“演出インフラ”を作ろうと思いました。『~“World Extension”』は、harevutaiでできる技術をフルに使って全力を出せたライブ。自分の中でのターニングポイントになりました」(渡辺)
――リアルでの活動が思うようにできない中、アーティストたちは工夫を凝らして新たな表現方法を探っています。アーティストにとって最大の表現の場であるライブの在り方は今後どのように変わると思われますか?
渡辺:オンラインライブはこれからも技術的な革新で僕らを楽しませてくれるものになると思うけれど、“変わる”という意味でいえば、個人的にはオンラインじゃなくてリアルのライブの方が変わっていくと思います。今までリアルのライブには、ステージと客席に明確な境界線がありました。たとえば照明ひとつとっても、明らかにステージの方が多いですよね。
でも、これからはもっとフラットになるのではないかと。客席側にも同じだけ照明や機構が吊れるように吊り点を増やすとか、耐荷重を増やすための工事とかをして、パフォーマンスをひとつの空間、ひとつのショーとして見るように変わっていくのではないでしょうか。
オンラインライブの在り方が変わってきている今、生のライブも考え方を変えない限り進化しません。演目によって合う合わないはありますが、「ステージから届けて観客が受け取る」という関係性から、一緒に作り上げていくものが増えてもいいかなと。リアルがもっとつながる空間になっていけば、オンラインとの差別化ができていいのではないかと思います。
――オンラインライブの場合、チャットやマルチアングルなど配信ならではの機能も楽しみのひとつです。今後どんな機能が実装されればより視聴者が楽しめるようになると思われますか?
渡辺:アイドルのライブだったら、会場にペンライトのような光るオブジェクトが置かれていて、スマホでポチッと押すとそれが光る、とか。サイリウムに限らず、自分がやったことのフィードバックがオンライン上から返ってくれば、オンラインでも繋がりが感じられると思います。似たような機能はすでにありますが、まだまだお金が掛かるし技術的にも大変なのが現状です。
十束:あと、ファンの声がそのまま聞こえる機能ができてほしい。タイムラグがあるとファンはちょっと冷めちゃうと思うので、スマホの前で「おとはすー」と叫んだ瞬間に、その人の声で私たちに聞こえてくるのが理想です。自分の声が届いている実感があれば、オンラインライブはもっと盛り上がると思います。いまはどうしても物理的な距離が離れているので、いつかそこを超えられたら……。
渡辺:圧倒的に通信速度が速くかつ安定していないと、オンラインを通したリアルタイムフィードバックは難しいですからね。でも、5Gが普及することによりそういう未来は必ず来ると思っているし、その未来に近いポジションにいたいと思っています。
――コロナ禍でファンと直接触れ合うことは難しくなりましたが、フィロソフィーのダンスはオンラインでリリースイベントやトークイベントを積極的に行っています。十束さんがおっしゃるようにアーティストとファンの物理的な距離が離れている今、その関係性はどう変化したと思われますか?
十束:お互いに寂しい、直接会いたいという思いが前提にあるとした中で、オンラインは結構良いものだなと実は思っていて。たとえば、子育てをしていて今まではライブ会場に来られなかった方が、オンラインライブを見て、それをきっかけにオンライン特典会にも参加してくださったとか。海外の方が「日本には行けないけどオンラインライブなら見られるよ」と言ってくださったとか。そんな新たな広がりもあるんです。
でも、これはこれで良いと思う一方、ライブで声援を送れない、イベントで直接お話しができないということに物足りなさを感じる方もいらっしゃいます。大聖さんがおっしゃる通り“オンラインは現場の代わりにはならない”ので、そこを私たちが埋めるしかないのだけれど、お互いのフィーリングやバイブスの調整がうまく行くかいかないかで、満足度は天と地の差。
「超楽しい!」という人とそうでない人がいる二極化状態になっているのが現状です。本音を言えば、もうちょっとやりようがあるんじゃないかと思っています。どうやったら、直接会っているような楽しい時間を提供できるのかなって。
渡辺:5Gが普及するともっと距離は近くなると思います。わかりやすい例だと画質と音質が良くなるし、タイムラグがなくなるから、相手が目の前にいて直接しゃべっているような感覚に近くなる。いわば全体の底上げですよね。
僕だったら、おとはすのASMR的なのものを超高品質で体験できるなら何周もしたいです(笑)。
十束:え、何周も(笑)。ファンの方にもそう思ってもらえることが大事ですね。
渡辺:今は通信量が限られているからできないことも多いけれど、向上していけばやれることは増えると思います。でも、それを楽しむには見る側の環境も変えていかなきゃいけない。
今現在、画質が汚いとか音がぶつ切りになるという人は、ぜひ速いWi-Fiや高品質なルーターを検討してみてください(笑)。環境を整えれば、体験の質は確実に上がりますから。
十束:そうですね。オンラインライブは全世界どこにいても最前列のど真ん中という特等席で見られる特別な場所。私はいつも画面の前にいるあなたのために歌い踊るという感覚でライブをしています。良かったら皆さんにも一度、特等席で見ていただきたいです。
渡辺:そして、見る時は“全力で楽しみに行く”、これですよ! 画面だからとかスマホだからとか考えないで、もうとにかく楽しんだもん勝ち。できるなら部屋を暗くして、爆音で、自分にとって最高の環境を作って「楽しもうぜ!」という気分で。誰も見ていないんだから、ペンライトも振りまくってほしいですね。
――最後にSHSHOWユーザーへメッセージをお願いします。
十束:スマホは私にとって生活必需品。アイドルとしてかわいい写真を世に放たないといけないので日々スマホでたくさん撮っているし、プロゲーミングチームに所属するぐらいゲームが好きなので移動中はゲームをするお供、朝起きる時は大好きな音楽を聞いて自分を上げたり励ましたりしていて、本当に相棒みたいな存在です。これからも私はスマホやたくさんのガジェット、デバイスを愛して生きていきたいと思います!
渡辺:僕もスマホは常に使っているんですけど、しょっちゅう画面を割ってしまうんです。皆さんは割らないようにちゃんとケースに入れましょう。いや、入れなくてもいいけど気を付けてください(笑)。スマホは大事に!
「forTUNE meets」
特典付きCD購入サイト「forTUNE music」と連動しているオンライントークアプリ。フィロソフィーのダンスのほか、乃木坂46や櫻坂46ら多くのアイドルたちがファン向けのイベントを開催している。
十束さん
「ウェブブラウザベースのライブ空間」
渡辺さん
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※ご利用方法、動作環境などは各サービスの公式サイトをご確認ください。
フィロソフィーのダンスのメジャー2ndシングル「カップラーメン・プログラム」のリリース記念ライブでも使用された配信プラットフォーム。各メンバーの"推しカメラ"を自由自在に選択して楽しめるマルチアングルSwipeVideo対応。
チケットぴあが運営するライブ配信サービス。アーティストのライブ、アニメやお笑いのイベント、演劇の舞台など多彩なコンテンツを提供する。
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