【5Gで変わるニューノーマル①】
劇団ノーミーツ✕俳優・青山郁代さん対談
コロナ禍で生まれた演劇の新しいかたち。「オンライン演劇」を楽しもう!

対談!劇団ノーミーツ✕俳優・青山郁代 オンライン舞台を楽しむコツ!

2020年、コロナ禍でエンターテインメント業界は大きな打撃を受けました。さまざまな舞台公演も中止、延期となり、今もなお、その状況は続いています。そういった中、いち早く「オンライン演劇」の配信をスタートさせたのが、今回ご登場いただく小御門優一郎さんが主宰の1人に名を連ねる「劇団ノーミーツ」。その名のとおり一度も「meets(会う)」せずに作品を作り、SNSを中心に話題となりました。コロナ禍でリモートでのコミュニケーションが広く普及したことによって誕生した「オンライン演劇」。その舞台裏を、小御門さんと第2回公演『むこうのくに』に出演のミュージカル俳優・青山郁代さんに聞きました。

小御門優一郎の顔写真

小御門優一郎

@KoMIkado_21g

1993年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。大学在学中の2015年に劇団「21g座」を旗揚げ。17年、松竹株式会社に入社し、歌舞伎座の劇場運営、公演宣伝業務に従事。20年4月、主宰の1人として「劇団ノーミーツ」を旗揚げし、「オンライン演劇」の製作を開始。SNS上に投稿した短編作品、長編リモート演劇『門外不出モラトリアム』『むこうのくに』『それでも笑えれば』で脚本・演出を担当。20年11月、主宰の1人である広屋が代表を務める株式会社Meetsに入社。

青山郁代の顔写真

青山郁代

@IkuyoAoyama

1985年大阪府生まれ。同志社女子大学学芸学部音楽学科卒。2011年、『ゾロ ザ・ミュージカル』で初舞台を踏む。13年、『レ・ミゼラブル』オーディションでコゼット役に抜擢。以後、数々の舞台に出演。14年、心理カウンセラーの資格を取得。20年、『ミス・サイゴン』オーディションでジジ役に選ばれるもコロナ禍で公演が中止に。最近作に、『ナイツ・テイル-騎士物語-』『メリー・ポピンズ』『キューティ・ブロンド』などがある。ほか、「関ジャニの仕分け∞」(EX)カラオケ対決、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(KTV・CX)出演など。21年、9月よりミュージカル『オリバー!』にローズセラー役で出演が控える。

みんなが5G みんなのSENSE AQUOS 5G SENSE5G

劇団誕生のきっかけはオンラインミーティング

――2020年、エンターテインメント業界は大きな打撃を受けました。松竹で歌舞伎担当をされていた小御門さんも、出演舞台の『ミス・サイゴン』が中止にとなってしまった青山さんも、間近で感じられていたかと思います。

小御門優一郎(以下、小御門):3月くらいから歌舞伎公演も中止になり、勤務形態も在宅に変わりました。3月中はまだZoomなどはあまり使っていなかったのですが、ルームシェアをしている同居人の1人がオンラインミーティングしている様子を見て、「このシチュエーションは演劇になりそうだな」と思ったんです。

同じ時期に大学の同級生の林から声をかけられて、広屋と3人でZoomで集まったことがきっかけで「劇団ノーミーツ」が生まれました。

青山郁代(以下、青山):『ミス・サイゴン』には2012年公演から、14年、16年と3度にわたり出演させていただきました。そして、昨年の2020年公演では10年前からずっと憧れていたジジ役をオーディションでついに掴むことができたんです。

海外スタッフが来日して稽古が日々進む中での全公演中止の決定は本当にショックでした。でも一番残念に思っているのは公演を楽しみにしてくださっていたお客さまですから、自分の気持ちはあまり表に出さないようにしていたんです。

左:「ミス・サイゴン」ジジ役の画像 右:帝国劇場『ナイツ・テイル』三人の王妃役の画像

青山さん『ミス・サイゴン』ジジ役スチール 写真提供:東宝演劇部、帝国劇場『ナイツ・テイル』で三人の王妃役を演じる青山さん 写真提供:東宝演劇部

ただ、『お芝居がしたい』と毎日願っていました。持て余した演劇に対する膨大なエネルギーをとにかくどこかで出したいなと、自分にできることを探していたんです。そのときに『むこうのくに』のオーディションを知り、ダメ元で応募しました。私のエネルギーを受け止めてくださったのが劇団ノーミーツです!

小御門:オーディションには青山さんをはじめ、演劇集団キャラメルボックスの鍛治本(大樹)さんや虚構の劇団の渡辺(芳博)さんといった舞台で活躍している方々が応募してくださいました。

旗揚げ公演の『門外不出モラトリアム』のときにも思ったのですが、オンライン演劇は身体表現も限られますし、生でセリフを取り交わすこともできないので、「演劇とは呼べない」と思う方もいらっしゃると思います。受け入れていただくまでに時間がかかると思っていたので、青山さんたちが応募してくださったことが本当に嬉しくて。オーディションでみなさんのものすごいパワーを感じ、この方たちとならさらにパワーアップした作品を作れるとワクワクしたのを覚えています。

青山:オンラインでのオーディションもはじめてだったので、とても新鮮な体験でした。終わったあと達成感とともに、沢山の方とお芝居ができた充実感が残ったんです。パソコンを閉じながら「あ〜楽しかった!」と自然に声がでました。

小御門:オーディションではエチュード(即興劇)をやっていただきましたよね。Zoomのミーティングルームでの会話が前提なので、画面を通じて探り合いながら会話をする、舞台とも映像とも違うセリフの発し方が求められるんです。みなさんが感覚でどのくらいできるのかを見たかったのでエチュードをやっていてだいたのですが、青山さんは短い時間の中でも自分なりの解釈をして仕掛けてくださって。こんなに熱意のある方となら、手探りで作ってきたオンライン演劇をもう一段階アップデートできるかもしれないと思いました。

劇団ノーミーツとは?

『それでも笑えれば』の画像

“NO密で濃密なひとときを”をテーマに、打ち合わせから一度も会わずに作品を作り上げるフルリモート劇団。もともとの知り合いだった企画・プロデュースの広屋佑規さんと林健太郎さんが、林さんの大学の同級生で、脚本・演出担当の小御門優一郎さんを誘い、緊急事態宣言直後の2020年4月9日に結成。演劇、映画、広告、イベント業界の若手クリエイターが集結し、TwitterをはじめとしたSNSに20作以上の「140秒Zoom演劇」作品を投稿。累計再生数は3000万回超。

これまでに長編リモート演劇『門外不出モラトリアム』『むこうのくに』『それでも笑えれば』の3作を上演。有料チケット制ながら動員はのべ14,000人以上を超え、12月には「オンライン劇場ZA」をオープン。コロナ禍でダメージを受けたエンターテインメント業界に新たな旋風を巻き起こしている。

60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSクリエイティブイノベーション部門ACCゴールドを受賞。

公式サイトhttps://nomeets2020.studio.site/

Twitterhttps://twitter.com/gekidan_nomeets

Instagramhttps://www.instagram.com/gekidan_nomeets/

YouTubehttps://www.youtube.com/channel/UCT7hZww9WW94UmkxXjVMCLg

TikTokhttps://www.tiktok.com/@nomeets

SNSでバズったことで生まれた長編リモート演劇

――劇団ノーミーツとしての最初の発信は、2020年4月9日にSNSに投稿された「Zoom飲み会してたら怪奇現象起きた…」という短編作品でした。その後、長編作品を上演されましたが、長編を作りたいという思いははじめからあったのでしょうか?

「劇団ノーミーツ」の初めての作品「Zoom飲み会してたら怪奇現象起きた…」

小御門:当初は長編作品が興行として成功するとはまったく思っていませんでした。在宅勤務の方が増えて、みなさん自宅のリモート環境が整ってきたなと感じた頃だったので、気軽に見られてクスッと笑えるような短編を発信すれば、タイムラインに漂う閉塞感が少し和らぐかなと。

青山:スピード感がありますよね。『むこうのくに』のときも、オーディションの翌日には合否連絡が来て翌週には発表と、ものすごいスピードで進んで行きました。

小御門:戦略的にそうしている部分もあります。ありがたいことに、「140秒Zoom演劇」が何本かバズって、フォロワー0人からはじめたTwitterも、すぐに1万人くらいの方にフォローしていただけました。はじめの頃は、私や主宰の1人の林(健太郎)の知り合いに声をかけて出演してもらっていたのですが、謝礼もお支払いできない状況で。みなさん「面白そうだからやりましょう!」と快く出演してくださったのですが、いつまでも甘えてはいられないなと。

もし、オンライン演劇の興行で利益が生み出せたら、コロナ禍に新しいかたちを提示できるかなとも思いました。希望を失っていた演劇界、映画界にいる方々に、何かしらの希望を見せたいとも思いはじめて。

画面は平面的で場所性の表現もむずかしい。60分以上の作品は見続けてもらえないと思ったのですが、もともとゼロからはじめた団体なので失うものもないなとも思い、5月末に初の長編『門外不出モラトリアム』を上演しました。

青山:『門外不出モラトリアム』は劇団ノーミーツさんの自己紹介的な作品ですよね。「オンライン演劇!こんな世界があるんだ!」と驚きました。

小御門:まさか5,000人以上の方々に見ていただけるとは思ってもみなかったのですが、やり終えて手応えを感じました。生配信ということもあり、演劇をやっている気持ちになれたというか。演者さんに「3分後に配信ページが開くので、カメラを切って待機してください」と指示出しをするのですが、それが舞台裏に送り出す感覚に近かったんです。

お客様の反応がチャット欄にリアルタイムで流れるようにしていたので、「これ、今やってるんだ!」といったコメントをいただくたびに、「同時に同じものを見ているんだ」ということも強く感じました。

――『門外不出モラトリアム』が5月末、青山さんが出演された第2回公演『むこうのくに』が7月末と、異例の早さで新作を発表されています。

小御門:「もっとやりたくなっちゃった」というところが大きいです。メンバーから、「次はロボットアームを使ってカメラを動かしたら面白いんじゃないか」とか、「1作目は場所性がなかったけど、次は背景や美術にこだわって空間を表現したい」とか、終演直後からさまざまな意見が上がってきたんです。「そんなにやりたいなら7月にやっちゃうか!」と、無邪気に決めてしまいました(笑)。

青山:『むこうのくに』の台本をいただいてまず思ったのは、「こんなシチュエーションができるの?」という驚きでした。でも、不安はなくて、ノーミーツでなら可能かもしれないという期待のほうが大きかったです。サイバー空間での日常離れしたシーンが多いなか、私がいただいた綾小路議員という役は、相手役との会話だけで成り立つシーンが多く、しっかり対話ができる役。演劇的な部分を任せていただけたのかなと思い、とても嬉しかったのを覚えています。稽古中も意見を出しやすい雰囲気だったので、作品がどんどんと進化していく印象がありました。

『むこうのくに』で青山さんが演じた綾小路議員の画像

青山さんが演じた綾小路議員(写真左)

小御門:青山さんにやっていただいたキャラクターの設定もコロコロ変えていましたよね(笑)。ト書き(登場人物の動きなどを書き入れた部分)のとおりにできたシーンもありますが、技術的にむずかしいこともありまして……。キャストのみなさんも技術スタッフのみなさんも柔軟に対応してくださる、この座組でなければできなかったと思います。

オンラインでも距離やラグを感じない芝居ができる

――稽古も本番も、実際はみなさんご自宅でやられていたわけですが、オンとオフの切り替えなど、むずかしいと感じたことはありましたか?

小御門:稽古終盤でみなさんのボルテージが高まってきたときに、ふと「私も自室にいるだけだし、みなさんもそれぞれのご自宅にいるんだよな」と思ったことがありました。それでもずっと一緒にやってきたバディのような感じもして、あるはずの距離やラグが関係ないものになっていく。制約に覆われたものが取り外されていく感覚を得られたときにオンラインでも芝居の掛け合いができることを再確認して「演劇はたくましいな」と改めて思いました。

舞台『むこうのくに』の画像

バーチャル空間が舞台となった『むこうのくに』。観客のチャット画面が横に出た状態で舞台装置の一部のよう

青山:私の場合は脚本に助けられました。作品自体がバーチャル世界の話だったので、自宅から稽古場にアクセスして芝居をすることすら当たり前に感じたというか。稽古も会議もすべて家からやるのが当たり前になっていたので、自然と『むこうのくに』の世界にどっぷりと浸れました。「やりにくくなかった?」と聞かれることも多いのですが、不思議と演じづらさは感じなかったんです。

ただ、決められた枠の中でしか表現ができないので、最初は照明やメイクなど、お芝居以外のことの研究も新たにしました。ライトの当て方、メイクの仕方や映り方で表情の見え方が変わるんです。

劇団ノーミーツの裏側の画像

それぞれの自宅にカメラが届き、カメラの前で演技をする(出演者のめがねさん)

小御門:役者さんにゆだねる部分はとても多かったと思います。だからあまり「演出家です」とは名乗れないというか(笑)。本来は演者さんにはお芝居に集中していただきたいのですが、会わずに作っているのでご自身にやっていただくしかないんですよね。実はまだ青山さんにも実際にお会いしたことがないですし……。とてもスケールの大きいお芝居をしてくださったので、僕の中では青山さんは身長が170cmくらいあるイメージでした(笑)。

青山:実際は158cmなんです(笑)身長を言ったらみなさんに驚かれました。今日の取材もオンラインでお会いできなかったので、落ち着いたらお茶にお誘いしますね(笑)。

小御門:よろしくお願いします。もう、会わないしばりのゲームみたいな感じになっていて、機材や衣装、小道具の受け渡しもすべて郵送でしたから。『むこうのくに』でいうと、主演の竹田(光稀)さんの部屋を改造するためにスタッフが部屋の中に入らせていただくこともあったのですが、竹田さんには外出していただいて、その間にロボットアームなどの機材を設置しました。

青山:鍵の受け渡しもポストに入れておいてもらったんですよね。

小御門:そうなんです。会ったらゲームオーバーですから(笑)。

青山:「もうそこは会ってしまってもいいのでは?」と思うようなところも頑なに会わないんですよね(笑)。「会わないこと」への徹底ぶりがすごいなと思いました。

ロボットアームなど、テクノロジーを駆使した撮影

――『むこうのくに』では、ロボットアームでカメラを動かすなど、カメラワークも話題になっていました。

小御門:主役の竹田さんのシーンで言えば、カメラスライダーに小型カメラを載せてベッドからデスクへの移動を追えるようにして、天井の突っ張り棒にカメラをつけて真上から吊るして撮れるようにしていました。公演中はあまり住みよい部屋ではなかったと思います(笑)。竹田さんの手が届くロボットアームはコントローラーで操作していただいて、手が届かないところはリモート制御で動かしていました。やはり機械なので信号を受けつけないこともあり……。そうなるともう手のくだしようがないので、オンライン演劇は怖いなと思いました。

劇団ノーミーツの裏側の画像 劇団ノーミーツの裏側の画像

リモートでそれぞれのカメラや映像を操作していた様子

青山:本番中に、竹田さんを映すメインのカメラがフリーズするというハプニングもありましたよね。そのときはスタッフさんが一斉に連絡を取り合って、「サブカメラ使ってください」とか、「スマホのカメラで演じてください」とチャットで指示を出して、絶対にストップだけはさせないぞ!と。まさに「 Show must go on」でした。本番中のやりとりを見ているだけで、ハラハラドキドキしました。

小御門:そんなこともありましたね。指示を出している間も芝居は続いているので、「このチャットを見ていたらさりげなく鼻をかいてください」というメッセージを送って、鼻をかいたら「見てるんだ!」と認識したり(笑)。

青山:千秋楽公演はたくさんのお客様がアクセスしてくださったので、お客様がサーバーに入れなくなってしまうトラブルが起きたんです。スタッフさんがトラブル対応してくださっている間、前説を任されていた出演者のめがねさんが急遽アドリブで話をしながら時間をつないでくださって。そして、他の出演者たちはSNSでお客さまに向けて現状連絡をしたりと、各セクション全力でバックアップをしました。すごいチームワークが出来上がっていました。

小御門:予想を超えた人数にアクセスしていただいたので、配布していたパスワードが効かなくなっちゃったんです。ページも自分たちで組んでいるので、予想を超えたことが起こるともう大変で。千秋楽公演は開演が15分遅れてしまって、本当に申し訳なかったです。

オンライン演劇なら、演劇初心者も気負わず楽しめる!

――チャット欄では、そういったハプニングも含めて楽しんでいる方が多い印象を受けました。演劇をはじめて見る方も多そうでしたよね。

小御門:チャットはリアルタイムのアンケートみたいなもので、技術的なご指摘はすぐに対応していました。「1日で変えてきた!」みたいに楽しんでくれるリピーターの方もいらっしゃって。こういうやりとりができるのもオンラインならではですよね。「観劇自体がはじめてです」という方もちらほらいらっしゃったので、初見の方には、「ライブ性のあるお芝居は楽しい!」と思っていただいて、コロナが収まったら劇場に行ってみてほしいなと。それから、ノーミーツに出ている俳優さんのファンになっていただいて、出演している映画や舞台を見に行ってもらえたら嬉しいです。

――YOASOBIやさよならポニーテールといったアーティストとのコラボレーションも、演劇ファン以外の方から注目を集めるきっかけになっているのではないかなと。

小御門:オンラインだと作品の終わりに流すエンドロールをたっぷりと見せられるので、主題歌は余韻の残る楽曲にしたかったんです。常に意識しているのが、「そのときに見る意味がある作品か」ということなので、時代を捉えたアーティストさんの楽曲で彩りたいという気持ちもあります。YOASOBIチームも当初は会うのはレコーディングのときくらいで、リモートメインで楽曲制作をしていた時期もあるらしく、親近感を案じてくださったみたいです。

――2020年12月末に「オンライン劇場ZA」もオープンされて、さらに作品の幅が広がっていきそうですね。

舞台『それでも笑えれば』の画像

「オンライン劇場ZA」で上演された第3回公演『それでも笑えれば』

小御門:「オンライン劇場ZA」は、いくらでも拡張可能というところを売りにしていきたいなと。こけら落としとなった第3回公演『それでも笑えれば』では、お客様にいくつかの選択肢の中から物語の進む先を選んでいただき、回答をすぐに集計して上演するというインタラクティブ性を持たせました。エンジニアが頑張って機能を実装してくれるおかげですが、演出の幅はどんどん広がっています。

HKT48とのコラボでは、メンバーのみなさんから無邪気な演出アイデアがたくさん出まして(笑)。「画面全体をバグったようにしてほしい」と言われたので、「本当にバグっちゃったの?」と思っていただけるように、本編映像のウィンドウをグラグラと揺らし、チャット欄には文字化けした文字しか表示されないようにしました。作品に寄り添って劇場自体が変形できるのは、オンライン演劇ならではですよね。

劇場を作ろうと思ったのも、メンバーのエンジニアの提案から。技術によって作品がよくなるのならば「やりましょう!」と言ってくれるメンバーがいることは心強いです。長編公演のエンドロールには、フロントエンジニアとバックエンジニアが数名ずついて、劇団を名乗っている集団のエンドロールとは思えませんが(笑)。

青山:劇団ノーミーツは天才集団という印象ですが、みなさん必死に努力されているんですよね。才能のある人たちが作品づくりに没頭し、必死で頑張っているからこそさらにいいものができる。そこが魅力だと思います。

スマートフォンは演劇の世界をも広げる

――生配信は、スマートフォンで見られている方も多いですよね。

小御門:半分くらいのお客様はスマホから入られています。特に『むこうのくに』は、普段自分がサイバー空間にアクセスしているデバイスで見ていただくこと自体にも意味を持たせたいと思って作った作品です。

青山:お話自体がサイバー空間にアクセスしている話ですもんね。本番もそうですが、稽古もオンラインだったので、スマホさえあればどこからでも参加できました。普段はパソコンからでしたが、他の稽古と時間が重なってしまったときは、稽古終わりにスマホでログインして、ノーミーツの稽古風景を見ながら帰宅。到着したらすぐにパソコンを立ち上げて稽古に参加という、有効な時間の使い方ができてありがたかったです。

小御門:打ち合わせに耳だけで参加する、“みみさん”という変な言葉も生まれました。結成当初は会社員だったので、本業の仕事が直前まで入っていたときには、移動中にスマホのZoomアプリを立ち上げてとりあえず聞くんです。意見はチャット欄にコメントで残して、発言したいときにはバス停とかで、「ひと言だけいいですか」とカメラをオンにして(笑)。スマホでよく「みみさん」していましたね。

青山:ミュージカルの歌稽古でもスマホは活躍します。以前はICレコーダーを持参していましたが、今はスマホのボイスメモ機能で録音することが多くなりました。

それから、スキャンして読み取って弾いてくれる「楽譜スキャナー」というアプリがとても人気です。

稽古風景を録画して記録することもあるので、稽古場でスマホを使う機会が増えています。

――5G時代が到来して、動画の視聴環境もさらに良くなっていきます。ノーミーツは今後、どのような活動をされていくのでしょうか?

小御門:『むこうのくに』や『それでも笑えれば』では、Zoomを使った分割画面の作品を作っていましたが、サンリオピューロランドとのコラボでは、閉館後のピューロランドをワンカットで追う形式で作品を作りました。

コロナ次第ではありますが、いずれは劇場でお客さんを入れたかたちでもやりたいです。劇場に足を運んで生で見ることと、配信でカメラ越しに見ることの両方に意味がある、両方で見たくなってしまうような作品ができたらなと。

2021年以降も「オンライン演劇」を続けていきたいですが、オンラインに固執せず、ワクワクできる新しいことを発信していけたらと思っています。

小御門さん・青山さんおすすめのアプリ

「Zoomミーティング」

どんなデバイスからでも簡単にミーティングの主催・参加ができる。驚きの使いやすさで、リモートワーク、ビデオ会議など、業務のオンライン化を加速させた。暗号化、役割別の操作権限の設定、パスコード保護など、セキュリティ面も強力。

アプリ「ZOOM」の画像
アプリ「ZOOM」の画像
アプリ「ZOOM」の画像

料金:無料
インストールはこちら▶︎

「楽譜スキャナー」

内蔵カメラを使用して印刷された楽譜をスキャンして演奏してくれるアプリ。ピアノだけでなく、ベースやギターなどから楽器が選べて、さらには速度を選択して楽しむことも可能。楽譜のどこからでも再生できます。

アプリ「楽譜スキャナー」の画像
アプリ「楽譜スキャナー」の画像
アプリ「楽譜スキャナー」の画像

料金:490円
インストールはこちら▶︎

どこからでも観られる! 応援できる! 演劇・ミュージカルの新しい楽しみ方

小御門さんと青山さんのお話にもあったように、コロナ禍で多くの公演が中止、延期になるなど、演劇界も大きく様変わりしました。こういった大変な状況の中で増えてきたのが、オンラインでの配信です。劇団ノーミーツのような「オンライン演劇」を生配信する劇団もあれば、劇場で上演する作品を生配信、もしくはアーカイブ配信する劇団も。ニューノーマル時代の新しい演劇の楽しみ方として注目されている「オンライン観劇」のメリットと楽しみ方をご紹介します。

オンラインだからこそのメリットもたくさん! オンライン演劇を楽しむためのコツ

観たかった公演のチケットが取りやすい

劇場と違ってオンライン配信には客席数に上限がないので、なかなかチケットが取れなかった人気公演のチケットも簡単に取れちゃいます! もちろん生で観るのが一番ですが、「話題の公演だったら観てみたいかも?」くらいの気軽さで観られるので、初心者の方にもおすすめです。

遠方で劇場に行けなかった公演も観られる!

規模によっては全国数カ所を回る公演もありますが、移動が大変な今、近隣で上演されないような公演も、オンラインで配信している場合があります。普段遠征しているという人も、今はそのお金をコロナ禍が収まったときの遠征費としてためておいてください!

オンラインなら飲食もオッケー!

劇場での飲食は禁止されていますが、オンライン観劇は自宅や自分の好きな場所など、どんなところからもアクセスできるので、好きなものを飲んで食べながら観ることができます。開演前に美味しいつまみや飲みものを用意して楽しんでください!

コメント欄でファン同士がつながれる!

劇場では絶対に許されない開演中のおしゃべりも、オンラインだったらチャット欄でのおしゃべりが可能です。リアルタイムに感想をつぶやきながら、ファン同士がつながれるという体験は、オンラインならでは。

アーカイブ配信がある公演は好きな時間に楽しめる

仕事や家事、育児などでなかなか観劇の時間帯に合わせられない人でも、アーカイブ配信のある公演のチケットを買っておけば、自分の好きな時間帯に楽しむことが可能です。演劇が好きだけど時間が合わせるのがむずかしかった層には、とてもありがたいメリットです。

開演時間よりも少し早めにログインしておこう!

開演直前には多くの人がアクセスするので、つながりにくいことも。実際に劇団ノーミーツの公演でも、予想より多くの人数がアクセスしたことによるトラブルが起こってしまったそうです。少し早めの時間に通信環境をチェックしてログインしておくのがおすすめです。

工夫次第で自宅で素敵な観劇体験ができる!

自宅だとなかなか集中できないという方も多いと思いますが、イヤホンやプロジェクター、大型モニターなど、オンライン観劇を楽しむためのガジェットを導入することで、より劇場の臨場感を感じることが可能です。あまりお金をかけられない場合は、部屋を少し暗くするだけでも気分がアガりますよ!

アーカイブ配信の配信期間はしっかり確認を!

生配信の場合はその時間にアクセスすれば問題ないのですが、アーカイブ配信の場合、配信期間を確認しておかないと、うっかり配信期間が終わってしまった、なんてことも。購入した際のメールに書かれているので、アーカイブがあるからと安心せずにしっかりチェックしてください!

スマホで楽しめる! オンライン観劇におすすめの配信サイト

※ご利用方法、動作環境などは各サービスの公式サイトをご確認ください

「オンライン劇場ZA」

スマートフォンやパソコン、タブレットを世界でたったひとつのステージに変える新しい劇場、オンライン劇場「ZA(ザ)」。従来の動画サブスクリプションサービスやオンライン配信サービスとは異なり、実際に劇場に行った際の臨場感や興奮を、友達や家族、世界中の人々と一緒に家や外出先でも場所を問わず体験・共有することができる。

オンライン劇場ZAのアイキャッチ

「オンライン劇場ZA」の詳細はこちら▶︎

「Streaming+」

チケット販売の「e+」が提供する、PC・スマホで楽しめるチケット制のライブ配信サービス。舞台だけでなく、音楽、クラシック、イベント、トークショー、美術展など幅広いジャンルの配信が楽しめる。

Streaming+のアイキャッチ

「Streaming+」の詳細はこちら▶︎

「オンライン観劇サービス 観劇三昧」

無料で100タイトル以上の演劇作品が観られるオンライン観劇アプリ。いつでもどこでもスマホが専用劇場に! 演劇動画を観て、劇団を応援することができます。

観劇三昧のスクリーンショット

「オンライン観劇サービス 観劇三昧」の詳細はこちら▶︎

「ZAIKO」

電子チケットを通じてアーティストとファンが直接繋がることができるプラットフォーム。コロナ禍では、有料ライブ配信サービスをいち早く提供し、エンターテインメント業界のニューノーマルを牽引している。

「ZAIKO」の詳細はこちら▶︎

動画サービスを快適に利用できる端末「AQUOS sense5G」でオンライン演劇を見よう

AQUOS sense5Gの画像

「AQUOS sense5G(アクオス センスファイブジー)」ではアプリや動画サービスも快適に利用できます。従来のAQUOS製品よりもバッテリーが大容量になり、電池持ちも良くなっています。5G対応で、データの読み込みやアプリの起動も快適です。

動画の読み込みが多くなっても「AQUOS sense5G」であれば快適にサクサク利用できるのでおすすめです。

詳細はこちら▶ AQUOS sense5G紹介ページ

  • 文/石本真樹
  • 撮影/岡田佳那子
  • 編集/株式会社LIG

更新日 :